2012年10月2日火曜日

郊外としての湘南と駅ナカ

『移動者マーケティング』という本を読んだ。JR東日本企画による本で、「乗客」を「移動者(移動する潜在的コンシューマー)」と定義しなおすことで生まれる新たな需要の創造についてまとめた本である。

品川のecuteのように駅ナカの開発でJRが成功を収めていることは記憶に新しい。最近では辻堂に駅直結の大きなモール(テラスモール湘南)ができたり、札幌でも駅(と地下道)を中心に再開発が進み地域のコアになっている様子が見て取れる。最大の例は、大阪ステーションシティが開業8ヶ月で来場者が1億人を突破した例だろう(大阪万博は6,421万人)。

個人的には、こうした動きについては色々と思うところが多い。なかでも辻堂に駅直結のモールができたことは割と衝撃的な出来事だった。

その理由を説明するには、まず辻堂という場所について書く必要があるだろう。辻堂は神奈川県の藤沢市にある。いわゆる湘南エリアに含まれるものの、どちらかといえば地味なベッドタウンである。最近になってマンションが大量に建ったりして人口が増えている。詳細はこちらでも。

ブランドとしての湘南にはお洒落なイメージがあるが、観光地、ベッドタウン、三浦展がファスト風土と呼んだロードサイド、農地、工場、未開発のなんだかよく分からない場所。これらがだだっ広い土地に散らばっているのが実像だ。一言で表すならスプロール。いわゆる「湘南」は、そのなかでも寺社や自然が集まった地域が特区のように存在していると言った方が正確だろう。

きわめて大ざっぱに言って、神奈川県は相模川の辺りでモータリゼーションを中心とした文化圏と、公共交通機関を中心とした文化圏とに分かれている(もちろんグラデーションはある)。テラスモール湘南ができた辻堂は、地理的にはその川の「手前側」に当たる。

JRによる駅を中心とした街の再開発がモータリゼーションからの脱却の一貫として行われているものとして考えると、辻堂はその最前線に当たる。入っているテナントもかなり気合いが入っていて(ロンハーマンが横浜よりも先にできた)、モールとしては勝負を仕掛けているのだろうと思う。そういう意味で、辻堂の先(東京から見て)に同様の駅ナカモールができるときこそ、大きな変化が生まれる可能性がある。

ただ、この動きも単にモノとカネの動きを活発にするだけでは、また別の郊外を生むだけで終わる可能性がある。その場合には、経済状況もあってより一層悪い形で実現するだろう。

そこで生活する人間を含めて、「都市」というものについてどのようなグランドデザインを描けるかということが問われているのだと思う。この辺りのことについてはまた書きたいと思うが、いち消費者としては、そこで自分がお金を落としたり、落とさなかったりする選択が意味を持つような形になって欲しいと思っている。

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