副題にImages and Quantities, Evidence and Narrativeとある通り、情報を伝えようとする際に用いられる要素全てが取り上げられている。読んでみると、これがとんでもなく濃密。テーマに沿って様々な図が引用されているのだが、距離を示す情報の例として中国の古地図とローマからトレドまでの尺(?)を並べてみたり、写真と人名の対応表とカリグラフィのルールを並べるなどして、情報の記述法を整理しながらデータの精度、粒度を下げるような図解の方法や記述に容赦なくメスを入れていく。
左上が中国の古地図、右がローマからトレドへの距離 |
この本のなかで世間に知られている箇所は、1979年に起きたチャレンジャー号爆発事故に関して、情報伝達の際に明確さが足りていればあの事故を防げた可能性があると述べている二章だろう。事故についてはWikipediaなどで詳しく記述されているが、Oリングに関する問題が低温と結びつけられていないどころか、Oリングに問題があったにも関わらず打ち上げに成功した事例と受け取られかねないものもあり、これらの明確さを欠いた報告書(事故後のものも含む)に対するタフテの批判は、かなり怒りも込められているのだと思うが、文体含めて非常に強くて鋭いものとなっている。
左上の図に載っている損傷度が右では無くなっている |
3章以降はまだ読んでいる途中だが、自分の仕事にも関わるところで、トラヤヌス帝の戦勝記念塔に刻まれた文字が引用されていて、とても強い印象を受けた。ここで見られるが、2000年前にこうした美しい文字が刻まれていたことに驚かされる。この文字を元にtrajanという書体が作られたことを考えても、今も使われている書体の原型を見ているような思いに駆られる。
特筆すべき点として、単語と単語の間にはinterpointという小さな点が刻まれていることが挙げられる。現在では単語と単語の間にはスペースが用いられているが、羊皮紙や紙、デジタルデータとは異なり、石の上の限られたスペースに文字を刻むときにはこうした記号を用いるのが一般的だったのだろうか。
記念碑の文字 |
Microsoft WordやOpenOfficeなどのワープロソフトには、半角スペースを表す記号として中黒よりも小さな点が用いられている。全角のスペースは□である。点である理由を深く考えることもなかったが、恐らくこれが原型なのだろう。カリグラフィは過去に学ぶ点の多い分野だが、石の文明の持続力には感じ入るものがある。
(その気になったら続きを書く)