2012年5月7日月曜日

言語による論述スタイルの違いについて

今年のGWは引きこもって読書と考えていたが、最終的には1500ページぐらいだった。

読む本にもよるのでこれで多い少ないはあまり意味がないけれども、多読しているよりも一冊をちゃんと読んだ方がいいような気もする。ただ、一冊を「ちゃんと読む」というのは難しくて、関連する本を並べながら共通する部分を取り出して差分を整理していく方が、少なくとも自分にとっては効率が良い。また、本というものは常に他の本との関わりのなかに存在しているので、一冊だけ読むというのはそもそも、あまり意味のない話であったりもする。

読もうと思っていたジャック・ドンズロの『都市が壊れるとき』や、構成主義の勉強でピアジェの本など読もうと思っていたが、進まなかった。どうもフランス圏の本は読みにくい気がする。表現やレトリックの問題もあるかも知れないが、これはフランス語特有の記述の方式もあるんじゃないかと思ったりもする。



カプランによる、各言語のコミュニケーションや記述のスタイルをまとめたこの図はけっこう面白い(なぜか、ずっとフーコーだと思い込んでいた)。それぞれの言語には複数の言語が含まれていて、例えばEnglishにはドイツ語、オランダ語、ノルウェー語、デンマーク語、スウェーデン語などが含まれる。これらの特徴をまとめると、

  • 英語:テーマから話が脱線したり、主題から離れることはなく直線的に進む
  • セム:テーマと、それに対置される考えの間を行ったり来たりする
  • 東洋:直接的でなく、テーマの周りを様々な視点から語る(日本語、中国語など)
  • ロマンス:しばしばテーマから脱線するが、脱線もまた豊かさのなかに含まれるため問題ない(フランス、イタリア、スペイン、ルーマニアなど)
  • ロシア:ロマンス語と同じようにしばしばテーマから脱線するが、テーマに対置される考えも含む

フランス人やイタリア人の話に脱線が多い、というのは話をしていると確かによく感じることで、笑える点ではある。むしろ、あいつらほぼ脱線だなと。

実際のところ、この分類はインド・ヨーロッパ語族の上での分け方に合わせた方が分かりやすい気がするが、これらの言語の成立の流れ、ギリシャ語からロマンス語(ラテン)とロシア(キリル系)に分かれ、ロマンス語から英語へと言語が発展していった流れを考えると納得できるものがある。

文字の上でもアルファベットとキリルで分岐している。宗教上のことも、ざっくり分けるとカトリックと正教徒とで分かれるのではないかと思う。ルーマニアは正教徒なので、言語と一対一で対応しているわけではないけれども。

翻訳について考えるときにも、この論述スタイルは考慮しておく必要がある。多くはドキュメントの構成の段階で決まるものだが、この分け方でいえば、テクニカルコミュニケーションというのは英語のスタイルに近いものになっている。単線的で、誤解を産まない表現が求められる。

日本語で書いたPR文などは、翻訳しても使えないというのが業界では定説になっていると思うが、恐らくこの記述スタイルの問題がある。ひとまず英語に訳した上で再構成するという手段が取られることが多いが、多くのサンプルで比較してみると、上記のグルグルをまっすぐな↓に近づけている部分があるのではないかと思う。

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