TAUSそのものは、Translation Automation User Societyの頭字をとっています。その名の通り、自動翻訳の活用や普及の促進をテーマとした組織です。この自動翻訳という表現は若干トリッキーなので注意が必要なのですが、似たような意味で使われている言葉として、機械翻訳があります。
TAUSはあくまで自動翻訳がメインで、機械翻訳ではありません。ここでの自動化と機械化の差とはなんでしょうか。わたしの考えでは、機械翻訳が人間の行なっている翻訳作業の一部を代替する技術であるのに対し、自動翻訳とは翻訳の前後の工程を含めたローカリゼーション工程全体の自動化するシステムです。(これらについては、もう少し詳しい話を別記事にする予定です)
この違いは、TAUSのウェブサイトにも掲載されている下記のロードマップにも表れています。MTの後ろにTranslation Automationがきていますね。
さて、TAUSには色々や個人が参加しており、大別すると下記の4つになると思います。
- 翻訳発注を行う企業
- 翻訳を受注する企業(翻訳会社)
- 翻訳者
- 機械翻訳の研究者
機械翻訳について言えば、コールセンターにとってブラック・スワンとして機能した実績があります。具体的にはヘルプ情報をオンラインで提供している企業の例となりますが、そこではヘルプの情報が原語(英語)のドキュメントを機械翻訳で各国語訳したものと、そのなかで問い合わせの多いものについて人間が修正を行ったものが提供されています。そして、いつでも原語のリンク先に飛んでいけます。
これがもたらした結果は、コールセンターへの問い合わせの減少でした。10%単位で減ったと聞いています。当然ながらコールセンターの縮小に繋がりました。コールセンターの運営を請けていた会社にとっては青天の霹靂だったのではないかと思います。
コールセンターの事例は、翻訳の価値やROIを考える上で重要な例となります。ヘルプ情報に機械翻訳を使ったきっかけは、全ての情報を人力で翻訳している時間も費用も無かったのだと思いますが、結果としてコールセンターの費用という軸が加わったことで、"人力翻訳vs機械翻訳"の前に"ヘルプによる情報提供vsコールセンターによる情報提供"に土俵が変わりました。場合によっては、ここに”CGM的メディアによるユーザ同士での情報交換”が加わるかも知れません。
こうしたことは、ミクロの技術的な詳細からマクロな市場の話まで、俯瞰しながら行ったり来たりしないと考えがなかなか深まりません。GALAにせよ、今は亡きLISAにせよ、この手のカンファレンスが日本で開催されることはあまりないので、とてもありがたい機会です。
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